面接でペンを売る?「このペンを売ってみろ」に対する完璧な答え方

 2022年5月12日

面接で「このペンを売ってみてください」と聞く意図

面接で「このペンを売ってみてください」と聞く意図

冒頭に述べたように、営業職などの採用面接ではときどき「このペンを私に売ってみてください」と言われることがあります。しかしインターンならまだしも採用面接でロールプレイングなんて珍しいですし、一般的な質疑応答の手法が当てはまらないため、いきなり言われても戸惑う就活生が多いです。

質の高い回答で好評価を狙うどころか、そもそも自分にいったい何が求められていて、どのような答え方をするのが正解なのか、さっぱり分からないという人もいるでしょう。

しかも企業によっては、営業職以外の面接でさえ「このペンを私に売ってみてください」と言われることもあるのです。そうなると、ますます質問の意図が理解できず混乱しますよね。何を答えてよいか分からず、見当違いなことを言うと失望されそうで怖いから、結局何も答えられずに黙りこくってしまう就活生も少なくありません。

面接で高評価を得られるような回答をするには、質問の意図を正確に把握することが不可欠です。コラムの初めにまず、「ペンを売る」というロールプレイングを求める面接官の意図について解説しますので、しっかり理解しておいてください。

営業能力があるかの確認

面接官が「ペンを売る」というロールプレイングを求める意図の1つは、その就活生に自社の商品(製品・サービス・情報など)を売るための営業能力があるか確認することです。「自分は営業志望じゃないから営業力なんて関係ない」という就活生もいると思いますが、そんなことはありません。

何も売らずに利益が生まれることはあり得ませんから、どんな業界であろうと世の中の会社という会社は1社の例外もなく全て、必ず「商品を売る」という行為を行っています。言い換えれば「商品を売る」という行為は、会社に利益をもたらし、会社を存続させるための要です。

たとえ自分自身が直接的に営業をしなくても、会社の一員になる以上は全員がその仕組みと、それに何が必要なのかを理解している必要があります。そうでなければ、ちっとも売れない見当違いな商品を作ったり、見当違いな仕入れや価格設定をしたり、見当違いなサポートをしたりして、結局は利益を損なうことになるでしょう。

それに商品を売るために必要とされる営業能力は、1つの能力ではなく様々な能力が絡んでいて、その中には営業職はもちろんその他の職種においても重要となるものが多いです。具体的に言うと「商品を売る」際のセールストークは、以下のような流れで行われます。

  1. 情報を集め、相手のニーズを引き出す
  2. 情報に共感し、反応する
  3. 相手の課題を整理したり商品やメリットを説明したりなど情報を発信する
  4. 購買を決意させるよう背中を押す

商品は需要があって初めて売れるわけですから、まずは相手の話を聞いて情報を集め、ニーズを見極めることが先決です。その中では相手がニーズを打ち明けやすい雰囲気を作り、話を促すためにリアクションを取るとともに、その後の提案に説得力を持たせるためにも相手に共感を示します。

その後ようやく相手の課題や商品のメリットを説明するなどこちらから情報を発信するのですが、それだけでは選択を相手に丸投げした状態で、成約に至る確率は低いです。そこで仕上げのクロージングとして最後に、その商品の必要性を感じさせるような機転の利いた決め手の言葉で相手の背中を押し、購買を決意させます。

そうした流れの中で主に必要となるのが、コミュニケーション能力(聞く力、空気を読む力、伝える力)、共感する力、論理的思考力、分析力、課題発見能力、発想力などです。そのため面接官は、営業職に限らず「ペンを売る」というロールプレイングをさせることによって、それらの能力をいっぺんにチェックしようとしています。

適応能力の有無の確認

面接で「ペンを売る」というロールプレイングをさせるもう1つの意図は、就活生の適応能力・対応力を見るためです。「ペンを売る」に限らず、日本企業の採用面接においてロールプレイングによる選考手法を用いるのは、あまり一般的とは言えません。

そのため突然「このペンを私に売ってみろ」と言われると、大抵の就活生は心の準備も対策もしてきていないために、驚き、困惑するはずです。そしてその場をどうにか乗り切ろうと、即興で対応を考えることになるでしょう。それこそが、面接官の狙いです。

商品を買う側と頻繁にやり取りする営業職はもちろん、それ以外の職種においても、仕事の上では想定通りにいかないアクシデントが頻繁に起こります。たとえば「商品を売る」最前線に立つ営業の場合は、顧客が急に注文を変えたいといってくるかもしれませんし、商品や対応に対してクレームが入ることも珍しくないです。

また、毎日同じルーチンワークをしているように見える生産工程や物流などでも、機械が故障したり渋滞にはまったり人が休んで足りなくなったりといった事態は起こり得ます。だからといって生産・物流が滞れば納期に間に合わなくなり、会社としては一大事です。

いずれにしても顧客の満足度を上げ、会社の信用を落とさないためには、不測の事態にも迅速かつ的確な対応が求められます。つまり会社としては、想定通りにいかないアクシデントが起きたからといっていちいち動揺し、焦って上手く適応できない人では困るわけです。

そのため面接官は、一般に面接で想定される質問とは異なる一風変わった質問をすることによって就活生にとってのアクシデントを作り出し、それにきちんと対応できるかどうか確認しようとすることがあります。「このペンを私に売ってみろ」という質問は、質問内容が面接で想定される定番でないだけでなく、そもそもロールプレイングです。

就活生の人柄やビジョンを聞き出す質疑応答とは、根本的にやり方そのものが全く異質のもので、就活生を驚かせる恰好のアクシデントとなります。しかもロールプレイングでは就活生の方から一方的に回答を述べることはできず、相手の出方に応じて、即興で対応を変化させていかなければなりません。

そうした中で、予想外の質問と展開に動揺せず冷静に受け留められるか、その場その場で臨機応変に的確な回答を返せるだけの思考力が働くかといったことをチェックされます。

ただし、仕事では対応が遅れれば遅れるほど命取りとなるので、即興とはいえあまりに考えこんで面接官を待たせないでください。想定外のアクシデントに対し、即座に対応できるレスポンスの速さがあるかどうかも見られています。

「ペンを売る」に限らず、面接において想定外の質問に対し即座に的確な回答を返すには、日頃から面接本番さながらの緊張感のある面接練習を積んで、適応力・対応力を養っておく必要があります。それには、自分がリラックスできてしまう身近な人間ではない、無関係の他人を相手に面接の練習を繰り返すのが一番です。

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「ペンを売る」に対する上手な答え方とコツ

「ペンを売る」に対する上手な答え方とコツ

ここまで述べてきたように、「このペンを私に売ってみろ」と求める面接官の意図は、就活生が仕事に必要な営業能力や対応力を持っているかどうか確認するためです。

ただし「このペンを私に売ってみろ」=「自分を営業・面接官を客と見立て、ペンを売るというロールプレイングを行う」という意味になります。面接官が聞いたことに就活生が答えるという一般的な質疑応答とは根本的に異質のものなので、他の質問に対して用いている定番の回答方法は通用しません。

それでは一体、何をどのように答えるのが正解なのでしょうか。ここからは、「ペンを売る」というロールプレイングに対する上手な答え方とコツについて解説します。いつもの回答メソッドは忘れ、フレッシュな視点で読み進めていってください。

まずは“客がどんなものを求めているか”を聞く

「このペンを私に売ってみろ」という質問に対しては、まず初めに”客がどんなものを求めているか”を聞くことから回答が始まります。先程も述べたように、「このペンを私に売ってみろ」という質問はロールプレイングですから、他の質問に対して用いている定番の回答方法を適用しようとしても無理です。

そもそもの前提として「聞かれたことに答える」という発想そのものを根本から捨て去り、自分を営業・面接官を客と見立てたロールプレイングだと捉える必要があります。そのうえで面接官という”客”に、このペンを買ってもらうにはどうすれば良いかと考えると、そこに必要なものは”客のニーズ”です。

映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に出てくるやり手の営業マンが指摘した営業テクニックの基本も、正にこの点でした。映画の中ではディカプリオから「このペンを俺に売ってみろ」と言われたやり手の麻薬密売人が、そのペンを受け取ったうえで、「そのナプキンにサインしろ」と切り返します。ペンを預けてしまって自分のペンを持たないディカプリオは、彼からペンを買い戻す以外にサインする術がないわけです。

「簡単だ。需要と供給だよ」と彼は言います。実際にはまっとうな企業でそんな強引な営業をしたらクレームものなので、面接では当然そんな風に無理やり需要を作り出すわけにはいきませんが、理屈は同じです。

商売は需要と供給によって成り立つので、相手が欲しがらない商品(需要のない商品)をいくら売り込んでも、購入する気にさせることはできません。逆に言うと、そもそも相手のニーズにピッタリ合った商品をオススメすれば、あれこれ工夫をこらしたセールストークを並べなくても商品は売れます。

ですから面接で「このペンを私に売ってみろ」と言われたら、どうやってペンを売り込むかを考える前にまず客(面接官)がどんなものを求めているかを聞いて、そのニーズを把握することが先決です。

「聞かれたことに答える」といういつもの回答方法が頭にこびりついていると、面接の回答として相手に質問するところから始めることに違和感を感じるかもしれませんが、今回だけはその固定概念を忘れてください。

前述のように実際に行われる営業の現場でも、まずは相手のニーズを把握するところからセールストークが始まります。それと同様に「ペンを売る」ロールプレイングでは自分が営業になり切り、客(面接官)のニーズを聞き出すところから、相互通行の会話形式によって話を進めていくのが正解です。

まずは「なぜペンを探しているのか」「どんなところでペンを使うか」「ペンを使う上で困っていることは?」など、客(面接官)のペンにまつわる背景を聞き出しましょう。それらの話から、客(面接官)にとって”買う価値のあるペン”とはどんなものかを分析し、それに合わせて商品を提案していくことになります。

商品の特徴を伝えるよりも、“使用する利益”を伝える

「このペンを私に売ってみろ」と言われたら、ペン自体の特徴を長々とアピールするよりも、それを使用することによって相手が得られるメリットを伝えるとよいです。人が何かを買うときは大抵、現状で抱えている課題を解決する、目指す目的を達成するといった、何かしらの”叶えたいこと”が動機としてあります。

たとえば、眼鏡を購入する人は今よりもっとハッキリ見えるようになりたいか、あるいは見栄えをよくしたいといった欲求があるはずです。提示される商品がどんな高価な価値ある眼鏡であっても、自分の必要を満たさない特徴はその人にとっては無価値と見なされます。

それなのに、ハッキリ見えるようになりたい人に対して眼鏡のファッション性をいくら語っても無駄ですし、オシャレに見せたい人に対して視力の話をしても無駄です。それと全く同じことが、「ペンを売る」ロールプレイングにも当てはまります。

そのペンには様々な特徴があるかもしれませんが、売り込む相手によって胸に響くポイントは異なるので、客にとっての必要性を満たすポイント以外の特徴を、ダラダラとたくさん並べ立ててもまるで意味がないです。むしろ、自分にとって不必要な情報をベラベラまくしたてられたら、客は時間を無駄にされているように感じ、不快になります。

それよりも、”客が求めているもの”に的を絞ってアピールした方が効果的です。前述の聞き取りの段階で客(面接官)のニーズを把握したはずですから、それに沿った特徴に絞って話を進めてください。

ただし、ペンの特徴だけからアピールするとなると、「書き心地の良いペン先です」「疲れにくい形です」という風に一瞬にして話が終わってしまい、やや無理があります。それでは客(面接官)にとって、ちっとも魅力的なペンには見えないでしょう。客(面接官)にそのペンの魅力を理解してもらうには、”実際にそのペンを使うとどんな良いことがあるか”という使用メリットを具体的に語り、強調する必要があります。

それは例えていうなら、ダイエット食品などの広告では含まれる成分を色々と表示するより、どれだけ瘦せたかという使用後の写真を掲載し、購買意欲を掻き立てるのと同じです。ペンを売るロールプレイングでは写真など使えませんから、そのペンを使うことで客(面接官)の要求がどんな風に満たされるかを、言葉で説明しましょう。

それによって使用メリットが具体的にイメージできればできるほど、客(面接官)にとって魅力的なペンだと思わせることができます。単純にそのペンの特徴だけを見ていても具体的な使用メリットは思いつかないので、面接官から聞き出したペンを使う背景と合わせ、”商品プラスαの価値”を考えるのがコツです。

とはいえ、「ペンを売る」系の質問に答えることは、非常に難しいものです。そこで、このような問題になれるため、普段から面接練習をしておくことを強くオススメします。

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金額指定がある場合は客の目線と合わせる

「ペンを売る」というロールプレイングでは、客と目線(価値観)を合わせ、共感することが重要になります。

先程も述べたように、同じ1つの商品でもそこに何を求めるかは人それぞれです。高機能なペンを求めている客にそのペンがいかにスタイリッシュか熱弁しても無価値と判断されますし、ファッション性を求めている客に機能性を説明しても無価値と判断されます。

客に「お金を払ってでも欲しい(買いたい)」と思わせるには、自分の価値観に基づいて情報を発信するのでなく、その人にとっての価値観を満たす商品説明をしなければダメです。それが何かを知るには、客の目線に共感したうえで、その人にとって何がお金を払う価値のあるペンなのかを考える必要があります。

特に「〇万円でこのペンを売ってみろ」というような金額指定の場合には、客にとって高いのも安いのもダメで、相応な値段だと思わせるように価値を伝えることが大事です。

就活生の中には「安い」と思わせた方がお得感があり、売りやすい気がする人もいるでしょう。しかし、本来の価値より低い値段を提示することによって購買意欲を喚起したのでは、自分の営業手腕を示したことになりません。

商品の値段というのは、その商品の価値に応じて決まります。自社の商品を「安いですよ」と述べることは、「自社の商品にはその程度の低い価値しかない」と言い、商品そのものの価値を落としてめてしまうのと同じです。

それは「ただ用途を満たせればいい」と考える一部の消費者には効果的かもしれませんが、プラスαの価値を欲する客には逆に商品に対する信用を失わせ、購買意欲を下げる場合もあります。なぜなら、「安い」=「簡単に安値を提示できる」=「大したコストがかかっていないし、高値で買う人もいない」=「大した価値のない商品」と客に連想させるからです。

そのため営業の現場では、「安い」という言葉を禁句としている企業も結構あります。基本的に「安い」を売りにするのは、価格競争に打って出た場合だけです。

ロールプレイングの題材となっている”ペン”は特に、用途を満たすという意義だけで言うなら文字を書ければいいわけで、それなら100円以下でも購入できます。それを数千円、数万円の値段で購入しようとする客は、明らかに「安ければ安いに越したことはない」と考え、誰も接客してくれない安売り店やセール品に群がる類の客ではないでしょう。

営業が最も必要とされる場面は、たたき売りみたいな安売り競争ではなくて、商品の価値を客に正しく理解してもらい、きちんと利益の出る正規の値段で購入させたいときです。

本来2万円で売れるものを1万円で販売したら、そのぶん会社が損をしていることになります。かといって1万円の価値しかないものを2万円の価値があると偽り、「今なら安くてお得です」などと誇大広告を打てば、客からの信用を失い、長期的には反ってマイナスです。

会社は、2万円の価値のある商品を安く売る営業でも、誇大広告で会社の信用を貶める営業でもなく、2万円の価値の商品を2万円で売ってくれる営業を求めています。

ですから面接官に自分の営業能力の高さを評価してもらうには、高いと思わせるのも安いとも思わせるのもダメで、値段相当の価値を伝えることが大切です。ただし、どんなペンを”値段相当”と思うかは客の価値観によるので、客の目線に合わせてペンの価値を考えることが重要になります。

【例文】「このペンを売ってみろ」への答え方

【例文】「ペンを売ってみろ」への答え方

面接で「このペンを私に売ってみてください」と言われたら、いつもの回答方法のセオリーは忘れて、面接官を客・自分を営業に見立てたロールプレイングとして対応しましょう。「面接官が質問→就活生が回答を述べる」という一方向の流れではなく、実際のセールストークと同様、自分と客との双方向のコミュニケーションによって話を進めていきます。

初めに述べたように、一般的なセールストークは以下のような流れです。

  1. 情報を集め、相手のニーズを引き出す
  2. 情報に共感し、反応する
  3. 相手の課題を整理したり商品やメリットを説明したりなど情報を発信する
  4. 購買を決意させるよう背中を押す

これを「ペンを売る」というロールプレイングに当てはめると、以下のように会話を進めていくことになります。

  1. 面接官のペンに対するニーズを聞き出す
  2. 面接官の目線に共感し、”この人が買いたくなるペン”とは何かを考える
  3. ”このペン”に関する情報と使用によるメリットを伝える
  4. 購入を促す言葉を述べて話を締める

これによると、「このペンを私に売ってみろ」に対する回答は、面接官に対して質問を返すところから始まるわけです。

ペンを使いたい状況や使用頻度、面接官が現在使用しているペンに対して抱えている不満、新しいペンを買おうと思った動機など、”この人が買いたくなるペン”の姿が推測できそうな質問を事前にいくつか考えておきます。

しかし、それに対して面接官がどのような答えを返すかは全くの未知数なので、その場その場で面接官の言葉に共感し、次にすべき質問を考えながらニーズを掘り下げてください。

それらの話を自分の中で整理し、面接官にとって買いたくなるペンの姿を考えて、オススメすべきペンの特徴とそれを使用することのメリットを伝えます。そして最後に、買うか買わないか決断させる一言を添えて、相手の返答を待つのです。

ただし理論だけだと、いまいち回答のイメージがつかめない就活生もいると思います。以下に回答例を記載しておきますので、参考にしてください。

面接官:「このペンを私に売ってみてください。」

就活生:「かしこまりました。では商品をオススメするに当たって、お客様のご要望をいくつか確認させて頂いてもよろしいでしょうか。」

面接官:「どうぞ。」

就活生:「ありがとうございます。まず初めに、お客様がペンを使われる状況はどういった目的が多いですか?お仕事ではパソコンを使われることが多いと思いますが。」

面接官:「そうだね。大半はパソコンやメールで済ますけど、顧客の細かな要望に応えるには、印刷した完成図を見せながら変更点を直接書き入れていった方が話が早いし、分かりやすいんだ。」

就活生:「確かにそうですね。そうすると、使う頻度も文字量も多そうですね。では、今使われているペンで問題を感じている点などはありますか?」

面接官:「今使っている100円均一のペンでも用は足りるけど、顧客の前で使うのに、何となく恥ずかしい気がしているね。相手は大抵、もっとちゃんとしたペンを使ってるから。」

就活生:「それはとてもよく分かります。仕事で持ち歩くペンは、そのビジネスパーソンの人柄や仕事の質そのものを表す鏡のようなものではないでしょうか。派手な装飾を凝らしたペンを持っている人は見栄っ張りに見え、堅実な仕事をするように思えません。それと同様に安いペンを持っていると、実際にはそうではないのに、安っぽい仕事をする人物だと誤解されそうですよね。」

面接官:「うんうん。」

就活生:「そこでオススメしたいのが、こちらのペンです。このペンは書き心地が滑らかで、客先で記入する文字をいつもより美しくしてくれると同時に、シンプルかつスタイリッシュなデザインで、お客様を洗練されたワンランク上のビジネスパーソンに見せてくれます。このペンで客先との商談を行えば、お客様とお客様の仕事ぶりに対する信頼度も上がり、これまで以上にお得意先がじっくりと耳を傾けてくれることでしょう。」

「また、お客様ご自身も自信を持って商談に臨めますから、説得力のある説明ができて、ゴーサインを得るまでの過程がスムーズになります。そして商談がスムーズに運べば、その分お得意先の満足度も上がり、次もお願いしようという気持ちになるはずです。」

「このペンは確かに100円均一のペンよりはずっと高価ですが、使い捨てではありません。しかもペン1つでお得先との信頼関係が強くなり、仕事がスムーズになるのなら、その価値は十分あると思いますよ。これを機会に購入されてみてはいかがですか?」

面接官:「では、いただこうかな。」

上の例では、ペンの使用目的と現在使っているペンに対する不満を話の突破口にしました。ただし、こちらの質問に対して面接官がどんな返答を返してくるかは事前に全く分かりません。

どんな返事が返ってくるにせよ、客に見立てた面接官の言葉に共感を示し、それに応じて話を展開していきます。そして商品提案に移ったら、ペンの特徴よりも使用することによるメリットの説明の方に力を注ぎましょう。

上の例では、このペンがビジネスパーソンとしての信頼度を上げ、自信を持たせてくれる結果、商談がスムーズに行くようになると述べています。そのように商品提案の際は、面接官に聞いた話の中から想像を膨らませ、相手の価値観に合ったメリットの情景を具体的に語ることが大事です。

とはいえレスポンスの早さも評価の対象になりますので、あまり長いこと考えこまず、素早く対応してください。最後は購入を促すような決め手の言葉を述べてクロージングします。

面接という緊張の場で即座にこんな回答を考えるのは、本職の営業経験者でもなかなか簡単にはいきません。回答方法と例文を読んで、いくら練習を積んでもそんな難しい質問に答えられる自信がないと思った就活生も多いのではないでしょうか。

そういう就活生には、キャリチャンの無料オンラインサービス「面接サポート」がオススメです。比較的面接が難しくない企業を紹介し、プロのキャリアアドバイザーがマンツーマンで面接対策を手伝いますので、面接が苦手な人でも大丈夫。

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面接で「ペンを売る」を答える際の注意点

面接で「ペンを売る」を答える際の注意点

「ペンを売ってみろ」という質問に対しては、いつも通りの質疑応答のように一方的な答えを返すのではなく、ロールプレイングとして相互通行のやり取りにすることが大事です。会社の要である営業の基本を理解している、予想外の質問や展開にも動じず臨機応変な対応ができるというところを見せましょう。

とはいえ実際に営業の仕事を経験したことのない新卒の就活生にとって、「ペンを売る」ロールプレイングはなかなか難しい課題です。それでなくても面接で緊張しているのに、唐突なロールプレイングに対する驚きと「どうにかして買う気にさせなきゃ」という焦りが加わり、反って失敗する例が少なくありません。

そこでここからは、「ペンを売る」の回答として印象の悪いNG例をもとに、回答の際の注意点について解説します。やってはいけない悪い例を知っておくことで、より良い回答作りの参考にしてください。

商品価値を優先した発言はNG

「ペンを売る」ロールプレイングの回答として商品提案する際、客にとっての使用価値ではなく、商品そのものの価値に重きを置いた売り込みをかけるのはNGです。営業に不慣れな人は「どうにかして買う気にさせたい」と焦るがゆえに、その商品がいかにすごいペンか、価値あるペンかという点ばかり強調する傾向があります。

しかし前述のように、ペンであれどんなモノであれ、客の用途を満たさない美点は無価値と同じです。ですからどんなに多機能で高品質のペンであるにせよ、客の用途を満たさない美点を長々と並べ立てたところで、何の意味もありません。

それどころか客にとっては、知りたくもない情報を長々と聞かされ、不快になるだけです。もしこれが実際の営業の現場だったら、客にウザったがられ、そのペンが売れることはまずないでしょう。

そのため面接の「ペンを売る」ロールプレイングでペンそのものの価値ばかりごり押しする回答をしたら、「商売の基本が分かっていない」「営業力が低い」と思われ、評価が下がってしまいます。むしろ、客は商品そのものの価値にお金を払うのではなくて、「その商品を使うことで可能になりそうな何か」を買うためにお金を払うと考えるべきです。

ダイエット食品を買う人は痩せた自分の姿を実現するためにお金を払い、車を買う人はその車でどこかに出かけるためにお金を払います。そしてその先には、「痩せた自分」「車を持っている自分」が成し遂げたい夢や希望があるわけです。

商品の優れた点いくらを並べ立てても、それを使うとどんな良いことがあるか分からなければ、客の心にはちっとも響きません。面接の「ペンを売る」ロールプレイングではそれを踏まえ、「これを使うとどんな良いことがあるか」という使用価値の部分に重点を置き、具体的な想像を搔き立てる回答にしてください。

客の価値観ではなく、自分の価値観で語るのはNG

面接で「ペンを売る」ロールプレイングの回答をする際は、客の価値観を無視し、自分の価値観で語ってはいけません。その商品に買う価値があるかどうか判断するのは客であって、自分ではないです。

自分の価値観に照らして「良い」と感じる部分をいくら伝えても、それが客の価値観に合っていなければ、全くの無意味になってしまいます。

たとえば、車を買うことで荷物の運搬を楽にしたいと思っている人に、その車がいかにスタイリッシュですごいスピードが出るかを語っても、全く購買意欲をそそらないでしょう。そういう客に車を売りたいなら、荷室がどれだけ広く、どんな形状や重さのものを運べるかに焦点を絞って説明する必要があります。

そのように極端な話、商品が車であれペンであれ、営業において売り手側がその商品のどこに魅力を感じ、それを使ってどんなことをしたいかはどうでもよいことです。売買が成立するかどうかは、客の価値観においてそのニーズにフィットする商品かどうかに全てがかかっています。

だからこそ最初にニーズに聞き出しを行い、客の価値観に共感するところからセールストークを始めたのです。それなのにいざ売り込みの段になって、自分の価値観を押し付けてしまったのでは、ニーズの聞き出しが意味をなさなくなってしまいます。

しかも、そうなると客役の面接官に響かないだけでなく、「客の意向を無視するなら、なぜニーズを聞いたんだ?」という疑問が浮かぶはずです。そして型通りのセールストークを真似ているだけで本来の意味を理解していないか、事前に用意した回答を述べているだけで即興の対応をしていないかの、どちらかと解釈されます。

いずれにせよ薄っぺらい回答だと思われ、面接で求められている営業力も対応力も示せないため、評価が下がるのは間違いないです。面接で「ペンを売る」回答をする際はそうした点を踏まえ、自分なりの価値観はいったん忘れて、客の価値観にしっかり沿った売り込みになるよう意識してください。

面接でペンを売る際は相手のニーズに合わせることが大切

面接で「このペンを私に売ってみろ」と言われたら、通常の質疑応答のように一方的な回答を返すのではなく、営業のロールプレイングとして相互通行の会話にすることが肝心です。

そこから面接官は、就活生が商売の仕組みを理解し、営業に必要となる様々な能力を兼ね備えているか、不測の事態にも動じず、即興でスピーディーかつ適切な対応が取れるかといったところを確認しています。その際に大切なことは、ペンそのものの優れた点を並べ立てるのではなく、ペンを使用した場合のメリットについて具体的に語ることです。

ただし、何をメリットと感じるかは人それぞれの価値観によって異なるので、まずは実際に商品を売るときと同様に客役の面接官のニーズを聞き出し、このペンを使うとその人にとってどんな良いことがあるかをその場で考える必要があります。ニーズの聞き出しやその後の提案に手間取らないよう、あらかじめ客に問いかけるべき質問を考え、様々なパターンを想定して商品提案の練習をしておきましょう。

とはいえ、客役の面接官が当日どんなニーズを示してくるかは全く未知数ですから、スムーズに適切な回答ができるかどうか自信が持てない就活生が多いですよね。誰かに何かを売るという経験がない人はもちろん、販売などのアルバイト経験がある人だって、初めて見る商品を初めて会う客に即興で買う気にさせるなんて簡単ではありません。

一般的な質疑応答の対策ですら手一杯なのに、このうえこんな難しいロールプレイングの対策をするなんて、無理だと感じる就活生もいると思います。そんな悩める就活生は、就活エージェントに頼るのが一番です。

就活エージェントは面接ノウハウに精通したプロですから、「ペンを売る」という難題にも適切な回答方法を指導し、ロールプレイングの練習を手伝ってくれます。就活のプロと一緒に様々なパターンの練習を積んでおけば、当日に面接官がどんなニーズを示しても、冷静に対処できるはずです。

キャリチャンでも、プロのキャリアアドバイザーが1対1で面接対策をお手伝いする無料のオンラインサービス「面接サポート」を開催していますので、ぜひ活用してください。面接における一般的な質疑応答から「ペンを売る」のような難しい質問まで、自信を持って回答できるよう総合的に面接対策をサポートします。

そもそも面接が苦手で、ロールプレイングまで対策している余裕がないという就活生には、そういった難しい質問を行わない企業を選んで紹介することも可能です。就活生一人一人の希望と面接力に合わせたきめ細やかなサポートを行っていますので、面接が苦手な人も難問への対策をしたい人も、安心してお任せください!

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この記事の監修者

監修者:平崎泰典

平崎 泰典

株式会社ジールコミュニケーションズ 
HR事業部マネージャー

2016年に入社後、企業向けの採用コンサルティング業務を経て、就職・転職希望者に対する個別就職支援を担当。「キャリチャン」「合説どっとこむ」において年間100回以上の就職・転職セミナーの講師も務める。

主な担当講座に「営業職や種類が適性がよくわかる解説講座」「手に職をつけられる仕事解説講座」などがあり、これまで3,000名以上に対して講座を実施。

就職支援では「自己分析」と「業界研究」を得意として、就活初期の学生や求職者を相手に基礎からサポートを行う。年間1,000名以上の内定獲得を支援。

~就活生へのメッセージ~

まず何から始めれば良いかわからない。そんな就職活動の一歩目をサポートします。